Silicon Valleyの歴史が学べるドキュメンタリー”Silicon Valley Documentary”

Masahiko Homma
Dec 20, 2020

先日、インキュベイトファンドで、Incubate Academyという、大学生向けに、5日間でベンチャーキャピタルという職業を学んでもらうセッションを行った。

その際に、改めて、シリコンバレーのベンチャーキャピタル業界の歴史を改めて調べていたところ、シリコンバレーの歴史について、非常にわかりやすく、当事者も多数登場する、良いドキュメンタリーを見つけたの紹介したいと思います。

今はNetflixをはじめ、良質なドキュメンタリー映画がどんどん産まれる時代。WVTCHというチャンネルの、”Silicon Valley documentary”エピソード1と3。起業家やベンチャーキャピタリスト、それを目指す人はぜひ見てほしい。当事者がリアルで出てくるので臨場感があります。

Silicon Valley documentary EP1

*軍事・冷戦時代とStanford大学の工学・宇宙工学の発展

10分あたり。のちにシリコンバレーの父と言われるStanford大学のFred Terman教授。当時、MITやCaltechに比べるとStanford大学は政府からの資金補助も少なく、研究面で著しく遅れていた。Terman教授は、軍事関連の研究を受けながら、Standford大学の工学・宇宙工学を強化した。Terman教授は、大学での研究を大学の内部で閉じず、世の中の為にドンドン使いなさい、という方針を打ち出し、多くのベンチャー企業が産まれた。1938年に彼の教え子(Bill HewlettとDavid Packard)が作った会社の一つが、Hewlett Packard社である。当時のアメリカの世の中のため、というのは、第二次世界大戦に勝つ、ソビエトとの冷戦に勝つ、ということだった。

Willian Shockleyがシリコンバレーの移住とFairchild Semiconductorの誕生

16分あたり。トランジスタの産みの親で、ノーベル物理賞受賞者のWilliam Shockleyが、母親の住む西海岸に引っ越したことから、軍事中心・真空管での電気・電子技術中心だった今のシリコンバレー地域が、1960年代以降、文字通りの”シリコン”バレーになっていく。

その後のShockley研究所(1956年)→Fairchild Semiconductor(1957年)→Intel(1968年)→有力ベンチャーキャピタルのKPCBやSequoia Capital(1972年)の創業、と同じところで働いていたキーマンが続々と作り出す会社群が、その後のアメリカのテクノロジー業界に、いかに大きな影響を与えたを考えると、いかに彼個人の西海岸への引っ越しが、そして一人の人間の才能が、ここまで社会に大きな影響を作れるかに驚かされる。

18分あたり、Intelを創業し、”ムーアの法則”を提唱するGordon Mooreも生で登場します。FairchildとIntelの設立に関わり、Appleへの創業の投資も行い、のちにベンチャーキャピタルの父と言われる、Arthur Rockも登場。両氏ともに、今は90歳を超えています。Intelの会長を長く勤め、AppleのSteve Jobsの解任時の役員でもあったRock氏。初期のテクノロジー会社に投資し、経営支援を行う、という、今のハンズオンのベンチャーキャピタルスタイルは、彼が産み出したと言われています。

シリコンバレーの多様性への変化

23分あたり。今のシリコンバレーの男性偏重、実力主義の競争文化と当時の女性起業家の話。会えば、スコッチのテイスティング、一緒にゴルフをする、という当時の男性同士のカルチャー。何人か女性起業家や投資家もインタビューに答えていますが、男性偏重のシリコンバレーの文化は、今でも大きく変化していないのだそう。

一方で、”Vision of Progress”を信じて、世界から集まる移民を受け入れるカルチャー。ここはどんどん進んでいる。YahooのJerry Yan氏、GoogleのSergey Brin、TeslaのElon Mask等、多くの起業家がアメリカ外のルーツを持つ。

大学発ベンチャーのお手本となるGoogleの創業ストーリー

36分あたり、Sergey BrinとLarry PageのStanfordの担当教授である、David Cheritonが、 かつて大学の博士課程に在籍経験のあるAndy Bechtolsheim を紹介。彼はその後Sun Micro Systemsを創業して成功していた。

初回のミーティングは30分もなかったが、David教授の自宅で行われた、Googleの初期デモを見て、Andy Bechtolsheimは、これはマネーメイキングマシーンである、と予感し、US$10万ドルのチェックを切ったと話している。

この一連の流れを見て思うことは、David教授が一番に紹介したのが、既にSun Microで起業家で成功していた、Andy Bechtolsheimだったということ。このような成功者が同じ大学の博士課程を出ていて、教授と近い関係であることが、Stanford、シリコンバレーの土壌の強さだと感じる。

Silicon Valley documentary EP3

パソコンの誕生。XeroxのPARC研究所のイノベーションのジレンマとApple社の誕生

11分あたり。1973年XeroxのPARC研究所がAltoを完成させる。現在のパソコンの原型となる、ビットマップ、ポインティングデバイス、レーザプリンティング、イーサネット。これら全て既にコンセプトが既に今から50年近く前に完成していた。しかし、コピー機の販売で絶好調であったXeroxはAltoの事業化には積極的でありませんでした。その後、当時20前半の若者、Apple Computerを創業したばかりのSteve Jobs氏は、1979年にPARC研究所でAltoのデモを見て興奮し、大ヒットとなるApple2の開発につながったと言われています。

シリコンバレーという場所について

41分あたり。Sun Microの共同創業者であり、Khosla Ventureの創業者でもある、Vinod Khoslaは、次のように言っています。

”1000のうち、990が取るに足らない失敗に終わる。しかし、10が残り、永続的に残るグローバルなインパクトになる”

Twitch(Justin.TV)の創業者で、その後車の自動運転のCruise Automation社(GMが買収し、現在はGMの自動運転の中核会社)を創業した、シリアルアントレプレナーKyle Vogtの言葉。

”どんなに難しい、挑戦的なことでも、ここでは数のゲームなんだ。一人の投資家でも一人の買収者でも、自分のビジョンに共感した人を見つけてYesと言ってもらえればいい。そして、ここはリスクをとって、ビジョンを実現したい人が密集している。こんなところは世界のどこにもない”

シリコンバレー。今このコロナの中、GAFAMを中心とした、米国のテック企業の企業価値は益々大きくなり、グローバルな社会に対する影響力は増すばかりです。それが産まれてきた土地。このドキュメンタリーを見ると、戦前から戦後、冷戦、半導体、インターネットの時代を経て、この土地には、何十年と、人的にも経験的にも脈々とつながっており、その根底に受け継がれてきている思想があると感じます。

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Masahiko Homma

Founder and General Partner of Incubate Fund インキュベイトファンド 代表パートナー www.incubatefund.com 過去ブログは→ https://corepeople.typepad.jp/